2006年12月24日

アトピー療法とは?

これまでの話で、アトピーは遺伝的素因、アレルゲンの感作量によって生じ、細菌の二次感染によって悪化すること、またその反応は生体の免疫反応によって生じることが理解できたかと思います。では、どうすれば治すことができるのでしょうか?
一つ一つの要因について対処法を考えてみました。目
1)遺伝的素因:これは生まれつきなものですから、どうしようもありません。しかし、アトピー遺伝子の存在について研究がされています。近い将来、アトピー遺伝子が解明されて遺伝子療法が可能になるかもしれません。
2)アレルゲン感作量の調節:最も現実的な対処療法です。しかし、アレルゲンが何でるか判明しないと具体的な対策が取れないのが問題です。そのためには検査を行う必要があります。検査方法には、血液検査と皮内反応検査があります。血液検査は検査所へ血液を送るだけで向こうで検査してくれます。動物病院では採血だけを行えば良いので手軽にできる検査法として普及しています。現在では100種類近くのアレルゲンについて詳細な検査が可能ですが、検査料が高価(約2万円)なのが欠点です。また、検査方法が血清中の抗体を酵素抗体法(ELISA)で比色測定するものですから、実際の生体反応とは異なる場合があります。
スペクトラムラボジャパン(http://www.slj.co.jp/index.html) のサイトを見ますと、検出する抗体はIgEを選択的に実施しています。前に説明しましたが、アレルギーの機序としてはT型〜W型まであって、IgEが関与するものはT型に属します。T型によるアレルギーは最も普遍的なものであり、犬では他のほ乳類と比較して血液中のIgEの分布量が多いことから、IgEを検出する方法は特異性が高いと思います。しかし、生体内では他の抗体によるアレルギーも生じること、アレルギー性接触性皮膚炎ではW型も関与することからこの結果が原因の特定に十分とは言えません。皮内反応も主としてT型を判定するものですがW型の判断も可能です。調整したアレルゲンを犬の皮内に注射接種するのですが、アレルゲンの調整が難しく、検査が行える動物病院は限られています。メリットとして、実際の生体内での反応を見ることができるのでより確実性が高いことが挙げられます。
 こうした検査で得られた結果から、 アレルゲンの可能性が高いものを日常生活から除去する、軽減させることが感作量の調整ということになります。IgEは鼻粘膜や気管、腸管粘膜に多く分布するため、この検査で検出されるアレルゲンも鼻や口から入る物質が多いです。しかし、全ての陽性物質を除去することは難しく、実際は強陽性の要因や食餌や環境等、身近なところから始めるしかありません。要因をよく分析して、一年を通してアレルゲン量が増えないような工夫をすることが重要です。また、その逆転的発想で、「減感作療法」という治療法が近年行われるようになりました。これは、アレルギー反応を起こさない程度の量に調整したアレルゲンを継続的に投与することで免疫寛容(過剰な免疫反応を起こさせないように免疫細胞を慣らすこと)を起こさせ、アレルゲンとして認めなくする方法です。しかし、皮内反応試験の結果をみて治療を開始することから、アレルゲン調整がきちんとできる病院でしか行えませんし、治療中にアレルギー反応を起こす場合があり、そのときは長期間治療を中断する必要があります。複数のアレルゲンに対応することも難しいと思われます。

今回はアレルゲンのお話で終わりです。次回は免疫に作用する薬についてお話します。顔(チラッ)

ニックネーム るる at 21:20| Comment(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月17日

アトピーについてお勉強(4)

更新が遅れてごめんなさい!ふらふら
師走ということで「師」の端くれでもあるるるパパも忙しく走り回っています。
さて、最終章は遺伝と治療についてお話しするといいましたが、前回の章でいろいろと質問を受けましたので、先にその回答について述べます。

Q:アレルギー発生の流れをみると抗原であるアレルゲンの侵入を防ぐしかないと言われるのがよくわかりましたが いわゆるアレルギーを起こす人(犬)と起こさない人(犬)の違いはどこからなのでしょうか?
A:アレルギーの要因である免疫(抗原抗体)反応自体は正常な生体反応であり、これ自体を無くすことはできません。成る個体とそうでない個体の違いは、遺伝的素因や母子免疫、環境要因と様々です。遺伝的素因については、犬種によって成りやすいものとそうでないものがあると言われていましたが、現在はどのような犬であっても成る可能性が指摘されています。生まれつきリンホカイン物質の産生能力が強かったり、T細胞の働きを抑制する機能が低下しているといった免疫に関係する遺伝子の変異によるものです。
遺伝的素因についてはまだまだ未解明な部分が多いようです。

Q:例えば私は疲れたりしてアトピー症状がでると「免疫力が落ちてる…」と何気なく言ったりしますが これは正しいですか?
免疫力を高めると この流れのどこがどうなるのでしょうか?
A:アトピーに関して言えば、免疫力の低下という表現は正しくないかもしれません(免疫反応としては通常より過剰に行われていることになるのですから)。しかし、疲労等のストレスにより免疫能力が変化することは言われています。例えば免疫にコントロールするホルモンにはストレスにより分泌が促進されたり抑制されるものがあり、それによってアトピー症状が増強される場合があります。

Q:悪さをした抗体や脱顆粒を起こしたり壊れた細胞はその後どうなるのでしょうか?抗体には 一度体内にできると一生存在して新たなる細菌への感染を防いでくれるというイメージがあるのですが この抗体達も一生悪さをし続けるのでしょうか?これがある意味 アトピーは一度発症したら治らないということなのでしょうか?
A:血液中に出た抗体は時間が経つにつれて消えて(排泄されて)いきます。これを「半減期」いいます。予防接種を毎年受ける必要があるのもワクチン接種によってできた抗体が時間経過と共に減ってしまうからです。しかし、免疫細胞には抗原に対する記憶が残っているので、次回予防接種(感染)を受けた場合には速やかに大量の抗体が作ることができます。
T細胞、B細胞もそうですが、血液中の赤血球や血小板も細胞には皆寿命があります。寿命が来れば体内で分解、排泄されます。壊れた細胞は白血球に取り込まれて分解消化されます。

Q:アレルゲンを体内に入れたりする治療(?)があると聞いたような気がするのですが この発生のメカニズムをみる限りありえないと思ってしまいましたが・・・?
A:良くご存じですね!!これは今回の勉強会でも紹介されました。「減感作療法」といいます。希釈したアレルゲンを少量皮下注射(週1回、3ヶ月間、合計12回)し続けるものです。何故、これが効果があるのかはっきりとは解明されていません。しかし、杉山に囲まれた田舎に住んでいる人にスギ花粉アレルギーが少なく、杉の生えていない都会で多く見られるのか...これがヒントになったのです。つまり、生まれてから常にスギ花粉に曝されているから体がそれを攻撃しなければいけない抗原と認識しなくなるのではという理屈です。そこで、即時型アレルギーを起こさない程度の量のアレルゲンを長期間投与し、体にこの物(アレルゲン)に対しやっつける意識を低下(体を慣らす)させるのです。但し、アレルゲンを投与するのですから再びアレルギー反応を起こすことがあります。症状が出れば投与を中止し、期間を開けて症状が無くなってから再び始めます。とにかく根気が必要ですし、効果が出ないこともあります。

Q:これは アレルギー発生とは関係のない疑問なのですが・・・
犬の痒みは人間のように表面でなく奥の皮膚が痒いから 掻いても掻いても痒いところに手が届いてなくて できれば皮膚を何枚もめくって掻きたいような発作的な衝動にかられて掻いていると聞いたことがあるのですが 犬の痒みは人間のようにポイントで痒いのですか? それとも犬にもどこが一番痒いかわからないような感じで ともすると全身が痒かったり 痒みがあちこちかけめぐってるような感じなのでしょうか?
A:う〜む...犬の気持ちを聞けないので私もわかりません。皮膚の構造は角質の厚さの違いこそあれ、基本構造には人も犬も違いはありません。アトピーの場合、好発部位は比較的皮膚の薄いところです。症状として目に見え易いところがそこと言うだけで、実際は全身が痒いのかもしれません。

マギー母さん、こんな回答でよかったですか?
判りにくかったらまた質問して下さいね。顔(イヒヒ)
ニックネーム るる at 15:32| Comment(4) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月09日

アトピーについてお勉強(3)

アトピーはアレルギー現象のひとつです。
アトピーを理解する上で、アレルギーについても勉強してみました。
アレルギーは過敏症とも言って、アレルゲン(抗原)が繰り返し侵入することにより生体側に生じる免疫反応のうち、激しい炎症反応や組織障害を伴うために生体にとって好ましくない反応のことを言います。アトピーやアナフィラキシーなどのように、体液性免疫(抗体)が反応の主役となる即時型アレルギーとツベルクリン反応や接触性皮膚炎等のT細胞が主役となる遅延型アレルギーとがあります。(出典:「動物の免疫学」小沼操ほか共著、文永堂出版)
アレルギーを発生の機序により分類してみると4つに分けられます。
ruru122.JPG
これは人での分類ですので、犬や他の動物にも当てはまるかは不明です。しかし、基本的な生体反応は一緒と考えた上でお話しします。
1型 食餌性のアレルギー、蕁麻疹、薬物やワクチン中毒、寄生虫感染に見られるもので、皮膚の発赤や腫脹、皮膚炎、呼吸器症状、ひどいものでは全身性のショックを引き起こして死に至ることもあります。
抗原の感作によりB細胞が分化、増殖しIgE抗体を産生します。IgEは好塩基球やマスト(肥満)細胞にくっつき、細胞が脱顆粒(ヒスタミン等の炎症性物質の放出)を起こします。
2型 自己免疫性疾患や薬物アレルギー、原虫感染や臓器移植に見られるもので、異物と認めた細胞等の排除に働きます。産生された抗体が異物として認識した細胞(自分自身の細胞であっても)にくっつき、細胞を壊してしまいます。赤血球を認識した場合は溶血性貧血を起こします。
3型 薬物アレルギーやリウマチ性関節炎、フィラリア感染に見られるもので、免疫複合体(抗原と抗体がくっついたもの)局所の組織に沈着して障害を起こします。血管内皮に沈着すると血液が流れなくなり壊死を、腎臓の糸球体に沈着すると腎不全に陥ります。
4型 細胞性免疫反応によって12時間以上かかって発現する遅延型過敏反応で、接触性皮膚炎、細菌感染症(皮内反応)、ワクチンの副反応、臓器移植等で見られます。抗原を認識したランゲルハンス細胞は抗原を認識したT細胞を沢山作っていきます。しかし、ここでは作るだけで、2回目以降の感染を再度受けると、このT細胞からは様々なリンホカイン(サイトカイン)が放出され、いろんな組織の細胞に影響を与えます。

ふ〜あせあせ(飛び散る汗)ちょっと難しい話でしたが判りましたか?顔(汗)

さて、犬ではの免疫の特徴として、血清中にIgEが多量に含まれており、その量は人間の100〜1000倍になるそうです。顔(チラッ)そのため、1型アレルギーの存在は昔からよく知られていました。また、人間の1型では呼吸器症状(せきやくしゃみ、鼻水)が主症状なのに犬では肝臓(全身性のショック)や腸管(下痢)に障害を及ぼします。ノミアレルギーは1型のほかに4型も関与しているといわれ、実際の臨床では複数の型が関与していることが多いようです。
(本来、型表記は時計文字を使うのですがこれが機械依存性でブログ上では正しく表示できないかもしれないので、今回は1型と表記しました)

次回はアトピーについてお勉強の最終回、遺伝的素因と治療法についてお話しします。
ニックネーム るる at 10:08| Comment(9) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月07日

アトピーについてお勉強(2)

引き続いてアトピーについてお話します。
アトピー症状(かゆみ)はどうして出現するのか。
まずはアトピーという病気の要因を図で見てみましょう。
ruru121.JPG
氷山にたとえると、海上に出ている(目に見える症状)部分はかきむしり等による皮膚の損傷とそれを悪化させる細菌感染が要因としてみられます。しかし、水面下には遺伝的素因(アレルギーを起こしやすい体質)とアレルゲン(抗原)感作が潜在的要因としてあるのです。かきむしりにいては保湿性のシャンプー(セデルミンシャンプー:イオウ成分)を使う、服を着せる、カーラーを使う、細菌感染については抗生物質により細菌の増殖を抑えることで対処が可能です。
次に
ruru120.JPG
コップの中に遺伝的素因とアレルゲンのジュースが入っていると思って下さい。コップからジュースが溢れなければアトピー症状は出現することはありません。しかし、アレルゲンの量がどんどんコップへ注がれると、コップからジュースが溢れ出てしまいます。この溢れた状態がアトピー症状の出現となります。つまり、アトピーをコントロールするためには、アレルゲンの量をコントロールするしかないのです。
では、どうやってコントロールすれば良いのでしょうか?
それは、アレルゲンを遠ざける、それが出来ないならアレルゲンから遠ざかることです。遠ざける・・・これは摂食や接触を避けるということです。遠ざかる・・・これは人間でも良くある所謂「転地療法」と呼ばれるものです。
アレルゲンを特定するためには、血清抗体検査や皮内反応がありますが、費用面、技術面、また得られた結果だけが全てで無いことを頭に入れておく必要があります。
環境要因では、アレルゲンと成り得るものの除去(こまめな掃除、換気、空気清浄機の使用、可能性のある物体の除去)を、食餌性要因については、アレルゲンとならない餌(獣医師処方フード)にアレルゲンと成り得るものを加えて、1週間給与して症状を観察することでアレルゲンを特定していきます。かなり根気がいる作業です。加える量は、薄く大量よりも濃く少量の方がアレルゲン効果が高いようです。
但し、素人判断では決して行わず、かかりつけの獣医師に相談してみてから実施してください。

ニックネーム るる at 18:20| Comment(4) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月04日

アトピーについてお勉強(1)

先週ですが、地元の大学で小動物臨床研修会があり、内容がアトピーだったこともあり、久しぶりに大学生気分を味わってきました。ビル
演題「アトピーは何故治りにくいか」
1アトピーの好発部位次項有口周り、鼻、耳(高い%で外耳炎の発生がみられる)、肉球、肛門周辺。外耳炎は抱き合わせで見られるくらい多いようです。肉球部分も周辺の脱毛と発赤を伴います。掻くことにより脱毛や皮膚の変色が起こり、創傷部分からの細菌感染によりさらに悪化します。
2症状次項有激しい痒み、一般的な皮膚病薬が効かない、再発をくりかえす。ステロイド剤や抗生物質で症状の緩和はされることはあっても治癒はしない。
3アトピーの原因物質(アレルゲン)に成りやすい物次項有ノミ(65.4%)、ハウスダスト(32.1%)、ブタクサ花粉(21.0%)、日本杉(4.9%)、羽毛(3.7%)、煙草の煙(1.2%)。食べ物では、牛乳(8.6%)、卵(7.4%)、豚肉(3.7%)、牛肉(2.5%)、鶏肉(1.2%)...意外と動物性蛋白質がアレルゲンとなる%が低いこと、環境要因が重要であること、ハウスダストはダニの死骸等が含まれ、ダニは死骸になってからのほうがアレルゲンとしての作用が強いこと、小麦粉より含まれるイースト菌がアレルゲンになりやすい、絹も古く劣化した物はアレルゲンとなる等々、興味深い話が沢山ありました。
4アレルゲン検査:血清抗体検査と皮内反応の結果について質問したところ、現在の血清検査は詳細な項目で調べるので皮内反応との結果とリンクはしているが、血清抗体が無いからアレルゲンとして認識が無くなったかといえば、個体により結果がまちまちであるから皮内反応でまた出るかは判らないと回答されました。臨床専門の教授からはっきりとした見解が得られると思ったのですが、少し残念でした。顔(汗)

このお話については奥が深いので、次回へ続きます。
ニックネーム るる at 07:28| Comment(3) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする